記事

書籍『星を賣る店 クラフト・エヴィング商會』

アートとデザインの間に浮かぶ愛すべき星々の観測

クラフト・エヴィング商會は、吉田篤弘さんと吉田浩美さんによる装幀家ユニットです。「ないもの、あります」という看板を掲げた架空のお店、にして本造り工房という奇妙なユニットです。
先月まで世田谷文学館で「棚卸し」と呼ばれる展覧会を行っていましたが、その図録が平凡社から書籍として発売されています。本書は展覧会の図録というよりも、クラフト・エヴィング商會の総合目録といったほうが良いかもしれません。 猪熊弦一郎の「物物(編集・デザイン:菊地敦己 写真:ホンマタカシ)」を彷彿とさせる、モノの写真と短いコメントからなる写真カタログです。展覧会自体も仕掛けのあるとても面白いものでしたが、本書は展覧会以上にクラフト・エヴィング商會の商品(=作品)をじっくりと眺められる興味深い内容になっています。

個人的には、展覧会でも僕が特に楽しみにしていた、ちくまプリマー新書の表紙デザインが一覧で見られるのが嬉しい。ちくまプリマー新書は基本的に月2点ずつ刊行されるそうですが、一点ずつ表紙のデザインが異なるという、新書としてはとても手の込んだ装幀になっています。この新書の表紙をあらためて並べて見るとまたすごく良い。タイトルや本の内容をシンプルなグラフィックとして表現するには、コンセプトやモチーフの抽出作業が要になるのではないかと思いますが、一冊一冊のアイデアとシリーズの統一感が絶妙なデザインだと思います。

本書のちくまプリマー新書の紹介ページに「毎月、贈り物の小箱とリボンをつくるつもりでデザインしています」とありますが、あらためてデザインを眺めるとなるほどと膝を打つ言葉です。本書の本来の魅力は、僕が好きなちくまプリマー新書のデザインだけでなく、むしろ、奇妙なモノたちとしか言いようのない商會の「商品」群でしょうが、本書の装幀を含めグラフィックデザインを楽しむにももってこいの内容です。

ところでこれはまったくの雑感。「小洒落た」というのは両義的な言葉ですが、このちょっとグロテスクな感じを含んだ趣味の良い小洒落た印象に何か村上春樹的なものを感じます。これもまた両義的な意味ですが。なぜそう感じるのかは、単なる僕の勘違いかもしれません。そもそもクラフト・エヴィング商會のイメージの源泉となっている稲垣足穂について何も知らないので、おそらく勝手な思い込みだと思います。蛇足でした。

Amazon:星を賣る店 クラフト・エヴィング商會

Amazon:物物 猪熊弦一郎

出典・参照
単行本: 272ページ
出版社: 平凡社 (2014/1/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4582836410
ISBN-13: 978-4582836417
発売日: 2014/1/27
記事更新日
2014年04月18日
カテゴリー
デザイン
紙・加工